先週の土日で,今までいただいてたまっている挙式のタイムスケジュール用紙を整理していました。
ふと,用紙の裏に私が走り書きしたメモを見つけました。
「ああー,新郎の大学の恩師がスピーチされた時の詩だ」
そう,何となく覚えていました。
私は,ゲストの方・・・特に主賓クラスの方々のスピーチは,時間の許す限りメモっています。
一遍でも多く、生の披露宴会場で聞いたスピーチで印象的だったものを、皆さんにご紹介したいからです。
「心に残るスピーチ」のカテゴリに,「これは!」と感じたスピーチを都度ご紹介しておりますので、またご参考にしてください。
・・・そのスケジュール用紙の裏には誰かの「詩」を紹介された時の”断片”が書き留めてありました。
「あほらしいうた」とか「この川べりで」とか「ビールを飲んで」とか・・・
そのままググってみると,茨木のり子さんという女流詩人の『あほらしい唄』という詩であることがわかりました。
![]() 茨木のり子さんの詩集のご紹介です |
- 本のタイトル:『おんなのことば』
- 著作者:茨木のり子
- 今回のご提案する詩:『あほらしい唄』『自分の感受性くらい』
- 『茨木のり子』紹介サイト
関西の有名私立大学の教授が、新郎側の主賓として列席されていました。
その教授がご紹介されたのが、茨木のり子さんの『あほらしい唄』でした。
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『あほらしい唄』
茨木のり子
この川べりであなたと
ビールを飲んだ だからここは好きな店
七月のきれいな晩だった
あなたの坐った椅子はあれ でも三人だった
小さな提灯がいくつもともり けむっていて
あなたは楽しい冗談をばらまいた
二人の時にはお説教ばかり
荒々しいことはなんにもしないで
でもわかるの わたしには
あなたの深いまなざしが
早くわたしの心に橋を架けて
別の誰かに架けられないうちに
わたし ためらわずに渡る
あなたのところへ
そうしたらもう後へ戻れない
跳ね橋のようにして
ゴッホの絵にあった
アルル地方の素朴で明るい跳ね橋!
娘は誘惑されなくちゃいけないの
それもあなたのようなひとから
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昭和の激動の時代を生き抜いた茨木のり子さん。
一番多感な時期に終戦を迎え、色恋事よりも日々生き抜いていかないといけない、厳しい日常を余儀なくされた・・・そんな彼女が書いたストレートな恋愛詩。
ご自身で恥ずかしいのか、題名を「あほらしい唄」にされているところが逆にかわいらしいですね(笑)。
主賓の方は、この詩を朗読された後、次のようにお話されていました・・・
「恋愛などしている暇の無かった時代に、これだけ熱い想いを詩にできた茨木のり子さん。
理想や夢を語る暇があれば、今日明日食べる飯をどうするかを真剣に悩まなければいけなかった時代に、堂々と
娘は誘惑されなくちゃいけないの
それもあなたのようなひとから
と詩に書き残すことができた、彼女の矜持の高さに目を向けてください。
貴重な青春時代に迎えなければいけなかった”敗戦”への憤りが、逆に伝わってきます。
いまは豊かな時代です。物質的には・・・
しかし、今茨木のり子さんが味わったような終戦の厳しい現状、激しい閉塞感に追い込まれたとき・・・
果たして何人の人が、今持っている理想や夢を持ち続けることができるでしょうか。
どうかお二人!
二人で大事にしていきたい理想や夢を、どんなに厳しい現実にぶつかろうと、足元に降ろさないでください。
「こんな状態だから無理だ」なんて、周りのせいにしないでください。
二人が思い描いている理想、夢。
そこに向かって一生懸命やっているっていう状態を、ご家族に示し続けてください。
私も含め、ここに出席している皆さんもいっしょになって、走りながら応援します。
共にがんばりましょう!」
・
・
・
大学時代のゼミの先生なのでしょう。
「共にがんばりましょう」と言われて、新郎・・・背中がビーンと伸びて緊張されていました(笑)。
理想や夢が100%達成することなど無いのかもしれません。
達成することが大事なのではなく、達成させるための過程が大事なんだよ・・・そうお話されたように聞こえました。
「終戦の混沌とした時代にできたことが、平成の今できないという言い訳など・・・茨木のり子さんがもし生きておられ、目の前にいたとして言えますか?」
静かな話口調でしたが、すごく背筋がツンと正しくなるような、厳しいスピーチだと思いました。
最後に、もう一遍・・・茨木のり子さんの詩、『自分の感受性くらい』をご紹介します。
この詩は、今回の結婚披露宴には全く関係有りません。
私が見つけた、同じ茨木のり子さんが書かれた詩です。
先の『あほらしい唄』も次の『自分の感受性くらい』も・・・表現はまったく異なりますが
言いたいことは、同じではないかと思いましたので合わせてご紹介します。
何を大切にして生きていかなければいけないのか・・・
これは、『茨木のり子 7つの詩から人生を知る』というサイトから見つけました。
さらに背筋が伸びきってしまうくらい・・・(笑)、厳しい詩です。
あえてコメントはしません。
皆さんはどう受け止められますか?
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『自分の感受性くらい』
茨木のり子
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
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